成人式の写真

陶磁器の人形

 デジタル一眼レフの性能向上や低価格化に加え、PhotoShopなどのパソコンソフトにより高度な暗室作業が手軽に行える今日でも、成人式や結婚式など人生の節目の写真は、専門の写真館でプロの写真家に撮影してもらうのが上策だと痛感する出来事に遭遇した。

 古くから使い慣れた各種の銀塩Nikonに加え、レンズが共用出来るなどの手軽さから、「お試し」とばかり深く考えずにニコンD70を買った。それ以前から、家族用にキャノンやフジフィルム製などのコンパクト・デジカメは何台か使われていたが、当時の200万画素あたりの画質では「遠足の写真には十分か」と言った程度のものに過ぎなかった。しかし、D70の画質は家族写真用途だが十分な物があり、気が付くと、あまりの手軽さに加えデジタル処理に至るプロセス有利さなども加わり、銀塩ニコンは全機種、ゼロ・ハリーバートンのアルミケースに入りっ放しの「押入れカメラ」と成り果ててしまった。最近ではゼロハリに入れる価値もなさそうな気がして、100円ショップで売っているプラケースに入れてしまいたい気持ちを押さえられない。なぜなら、D70に続きニコンD200をメインカメラとして使い始めたうえ、銀塩では使えないニコンVRレンズなども増えはじめたからだ。

 従来の銀塩カメラデジタルカメラの大きな違いのひとつに、ネガフィルムやポジフィルムに代わって撮影画像を記憶させるメモリーの存在があげられる。パソコン用途中心のメモリーをカメラに入れるリスクを考えていなかった。パソコンでは、ハードディスクに保存されたマスターデータを複写しコピーデータとして移動させるためなどの利用が一般的だ。しかし、デジタル一丸レフのメモリーは唯一のマスターデータであり、かけがえの無い物だったのである。この20年、秋葉原を訪れる度に、価格が下がるか記憶容量が上がるかだったメモリなので、アキバの安物を買うことが染付いていたのだろう。アキバやアマゾンから「安かろう」で買った最新のノーブランドものを常用しており、書込みは早く運動会の撮影には最適。カメラ側でも、パソコン側でも、普段はエラーを起こすことなく順調だった。「メモリなんて皆同じ、早くて安ければそれでいい」とばかり、倍の価格が付いている大手メーカーや有名メーカーの物を使う事はなかった。

 そんな中、娘の成人式の撮影に使ったメモリも、アマゾンから「安かろう」で買った4GBのノーブランドのハイスピードもの。撮影後、自宅のパソコンに差し込んだ瞬間に「メモリエラーで読めません」と表示されてしまった。他のパソコンでも試してみたが結果は同じ。復旧ソフトや復旧サービスを探すが、価格が高い、内容が曖昧、信用が出来ない・・・などと3拍子そろっている。
知り合いの大手メーカ系のパソコン修理専門会社に尋ねて見ても、紹介された担当者からは何とも曖昧な回答が帰ってきただけ。ハッキリしていたのは、5万円以上かかる、駄目でも2万円近くかかる、頼んでくれるなと言わんばかりの口調。

 この辺から、「これは大変な事になってしまった」との実感が湧いて来た。銀塩ではサブカメラを使い2系統での撮影を心がけていたし、長期の海外旅行にもノートパソコンとストレージを持参し2重保存などには心がけていた。撮影済みがカメラで確認されているものが、パソコンに差し込んだ段階で、複数パソコンを使っても読み出せなくなると言う事は消えてしまう事とイコールであり、そんな事態になろうとは想像すらしていなかった。